治療を支える医療関係者の想い

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「遺伝の仕組みを知ること」と「自分らしく生きること」、両方の手助けができる存在でありたい

田代 真理 先生

高知大学医学部附属病院 臨床遺伝診療部 認定遺伝カウンセラー®

高知大学医学部附属病院臨床遺伝診療部で認定遺伝カウンセラー®としてトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)などの遺伝性疾患の患者さんとご家族の支援に携わっている田代先生に、よくある相談内容や認定遺伝カウンセラー®として心がけていることなどについて伺いました。

*:「遺伝性ATTR(ATTRv)アミロイドーシス」、「FAP(Familial Amyloid Polyneuropathy)」とも呼ばれています。

米国の大学で心理学を学び、認定遺伝カウンセラー®の道へ

幼少の頃から英語に触れる機会があり、海外文化が身近にある環境で育ちました。高校生の時にホームステイで異文化交流を体験し、もっと広い世界が見たいと思い海外留学に興味を持ったこと、また、科学をベースとした心理学を学べる場が日本にはあまりなかったことから米国の大学への進学を決めました。遺伝学の授業がとても印象的で、遺伝性疾患や遺伝カウンセリングについて知り、多くの学びを得たことを今でも鮮明に覚えています。たとえば、クラスメイトのほとんどは遺伝性疾患のことや、人種により発症頻度が高い病気と低い病気があることなどを知っていて、遺伝について学ぶことで自分自身を知る大切さに気付かされたことなどです。帰国後は、遺伝学と心理学の知識を活用できる仕事に就くことを目指して日本の大学院でも学び、認定遺伝カウンセラー®になりました。

現在は、遺伝性腫瘍(遺伝性のがん)の患者さんに対するカウンセリングを行う機会が多いのですが、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者さんからのご相談を受けることもあります。

患者さんやご家族とは世代を超えてのお付き合いに

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)において、当院の認定遺伝カウンセラー®が関わる場面は大きく2つあります。1つ目は、既に症状のある患者さんへの診断を目的とした検査で、遺伝学的検査の前にカウンセリングを受けたいというご希望がある時や、陽性の検査結果を医師から伝える時に立ち合う場面です。2つ目は、血縁者で未発症の方に遺伝カウンセリングを行う場面です。なかには発症前診断を希望される方もおられ、その際は発症前診断の前後で遺伝カウンセリングを行っています。

患者さんやご家族のイメージ

当院のトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者さんは、比較的高齢ということもあり、ご自身のことよりもお子さんへの遺伝に関するご質問を多くいただきます。具体的には、どの程度子どもへの遺伝の可能性があるかについてや、遺伝のことをお子さんに伝えるべきか、といった内容です。遺伝の可能性については医学的な側面から正しい情報をお伝えしますし、お子さんへの伝え方については、患者さんとの関係性についてもお伺いした上で、どうしたらいいかを提案するようにしています。また、病気に対して持っているイメージやその時のお気持ちも一人ひとりの患者さんで異なるものです。そうしたことも踏まえた上でどのようなサポートができるのかを考え、対応することが重要と考えています。

世代を超えてのお付き合いになる点が遺伝カウンセリングの特徴ですので、ライフステージに合わせた支援、相談してよかったと思っていただけるようなカウンセリングを目指しています。

困ったことがあったら思い出してもらえる、話しやすい存在をめざして

私は、常に医療関係者と患者さんの「かけはし」になれるようなカウンセリングを心がけています。たとえば、遺伝性の病気の患者さんは多くの診療科を受診しているケースがあり、「このことは誰に聞けばいいのだろう」と迷うことがあるようです。私がそうした患者さんが置かれている状況の全体像を知っていて、患者さんが困った時に認定遺伝カウンセラー®のことを思い出して声をかけてもらえたら――そんなことを思って日々取り組んでいます。私がお答えできないことでも誰に相談するべきかをお伝えすることはできますし、医師などにそのことを伝えて「かけはし」となることも、重要な役割の一つと考えているからです。

患者さんと医師の「かけはし」になる認定遺伝カウンセラー

また、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)のように患者さんの数が少ない病気ですと、同じ病気の方が身近におらず悩みを共有できる人がいなかったり、病気に対する周囲の理解が得られにくいといった悩みを持たれることもあります。認定遺伝カウンセラー®は病気のことを理解している医療職であり、周囲への病気の伝え方についてアドバイスすることもできます。ですので、病気に関する悩みは一人で抱え込まずに、ぜひお声がけいただければと思います。また、日々の健康管理や治療法について知りたいということで遺伝カウンセリングにいらっしゃる方も増えており、そうした場合には医師や看護師と連携してカウンセリングを行っています。

遺伝性の病気は特別なものではありませんし、病気だから何かをあきらめる必要もないと思っています。「医学的な遺伝の仕組みを知って自分らしく生きること」、私たちはその手助けができる、身近で話しやすい存在でありたいと願っています。

遺伝カウンセリングを受けたいときは、まず主治医など身近な医療関係者に声がけを

認定遺伝カウンセラー®に相談されたい場合には、まず普段の受診の機会に、主治医に「遺伝カウンセリングを受けたいです」とお声がけいただければと思います。難しい場合は、看護師や医療ソーシャルワーカーなどでも大丈夫かと思います。一例になりますが、高知大学医学部附属病院には、遺伝に関する相談を希望される患者さんやご家族がいらっしゃったら、院内だけでなく高知県全域の病院からも臨床遺伝診療部にご紹介いただける仕組みがあります。

遺伝カウンセリングを受けることができる施設については、「全国遺伝子医療部門連絡会議」のホームページ(http://www.idenshiiryoubumon.org)で調べることができます。また、認定遺伝カウンセラー®の所属施設や氏名については、「日本認定遺伝カウンセラー協会」のホームページ(http://plaza.umin.ac.jp/~cgc/index.html)で情報を得ることができますので、参考にしていただき、必要に応じて連絡してみていただければと思います。

費用については、発症者への検査は保険診療の範囲で行われますが、発症前の遺伝カウンセリングや発症前診断は、保険がきかない自費診療である点も知っておくと良いかと思います。料金設定は病院によって異なります。詳細は遺伝カウンセリングを受けたいと思われる病院のホームページを確認するか、直接お問い合わせいただくことをお勧めします。

遺伝に関する不安や悩みは、ぜひ認定遺伝カウンセラー®にご相談を

遺伝性の病気に関して不安なことや相談したいことがでてきた時は、ぜひ認定遺伝カウンセラー®にお声がけいただけたらと思います。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)についても病気に関する最新の情報を取り入れたり、他の医療職種との勉強会を通して安心して遺伝カウンセリングを受けていただける体制を整えています。また、「カウンセリングを受けたら検査を勧められるのでは?」といった不安もあるかもしれませんが、そのようなことは決してありませんのでご安心ください。

患者さんやご家族のお気持ちを大切に、自分らしい人生を送れるよう精一杯サポートさせていただければと思っています。

内容は、2021年8月インタビュー当時のものです。