検査について 診断に必要な主な検査
以下の3つが認められる場合に「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」の診断が確定します。
- 感覚障害、運動障害、自律神経系の障害や心障害などの症状・所見がある
- 体の中にTTR由来のアミロイドが沈着している
- TTR遺伝子に変異がある
診断までの一般的な流れは以下のとおりです。
(1) 神経機能の検査
運動神経(全身の筋肉を動かす神経)、感覚神経(痛み、冷・温感、触れた感覚を感じる神経)、自律神経(血圧・体温の調節や心臓・腸など内臓の働きを調整する神経)などの機能を調べるための検査です。手や足に電気刺激を与えてその刺激が伝わる速さを評価したり、座った状態と立ち上がった状態での心電図と血圧を連続測定したりします。代表的な神経機能の検査には以下のようなものがあります。
① 神経伝導検査
神経障害の有無や程度を調べるために行う検査で、運動神経や感覚神経における興奮の伝わる速さや伝わり方を調べます。
皮膚の上から運動神経や感覚神経を電気で刺激します。神経を電気で刺激するため、少し痛みを伴う検査です。
② 感覚検査
温度や痛み、振動などの感覚障害の有無や程度を調べるために行います。
振動や熱刺激などを与える機械を使用して調べる方法、つまようじや冷温水を使って調べる方法があります。
③ 腱反射検査
運動神経の障害を調べるために行います。
膝や足首、腕などの筋肉の腱をハンマーで軽く叩き、反射を評価します。リラックスして検査を受けるようにしましょう。
④ 筋力検査
四肢の筋力の低下の有無や程度を調べるために行います。
神経障害によっても筋力は低下するので、神経障害の起こっている部位を知ることもできます。
主な筋力検査
足の太ももや足の甲、手や腕などの筋力が低下しているかどうかを徒手的に評価する検査法です。
⑤ 起立試験
自律神経の機能を調べるために行います。
自律神経が障害されると血圧の調節がうまくできなくなり、ベッドから起き上がった時や、いすから立ち上がった時などに、めまいや立ちくらみを起こしやすくなります(起立性低血圧といいます)。
寝転んだ状態から立ち上がった時の血圧や脈拍の変動を調べます。
(2) 心臓の検査
心臓の機能や構造に異常がないか、また心臓にアミロイドの沈着がないかを調べるための検査です。
① 心電図検査
心臓の電気的活動を体の外から計測します。
手と足、胸にいくつかの電極を付けて、心臓で発生する微小な電気を記録します。
② 胸部X線(レントゲン)検査
胸部疾患の診断において、最も一般的な画像検査の一つです。心臓の全体像をとらえることができ、心肥大の程度などを調べることができます。
健康診断で行われるのと同じように、胸部にX線を照射して、通過したものを画像化します。
③ 心エコー検査
心臓の大きさや形、心臓の壁の厚さ、動き方、血液の流れる様子などを調べるために行います。
ベッドに横になり、胸にジェルを塗ってプローブと呼ばれる超音波を発する小型の装置を当てて検査します。
④ MRI検査
心臓の筋肉の状態や心臓の大きさなどを調べるために行います。
強い磁場と電波を使って体の断面を撮影する検査です。
検査用の点滴を受けてから、撮影します。
⑤ 核医学検査(シンチグラフィ)
心筋に沈着したアミロイドの影響を検出するために行います。
放射線医薬品※を静脈に注射し、専用の機器で撮影することで、心筋においてアミロイド沈着による影響が生じているかを画像で確認することができます。
※: 放射性医薬品とは、自ら放射線を出す放射性同位元素という物質で目印をつけた薬のことです。
⑥血液検査
心臓の機能を調べるために行います。
主な検査項目:心臓にかかる負担の程度(心不全の程度)をみるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)/NT-pro BNP、心臓の筋肉(心筋)の障害の程度をみる心筋トロポニンT/I など
(3) 生検(生体組織検査)
正確な診断を行うために必要な検査です。お腹の脂肪や胃・十二指腸の粘膜などから組織の一部を採って、組織へのアミロイド沈着の有無やアミロイドの種類を顕微鏡で調べます。
(4) 遺伝学的検査
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの確定診断に必要な検査です。血液などから遺伝子の情報を解析して、TTR遺伝子に変異があるかないかを調べます。
遺伝学的検査の結果は、患者さんご自身だけでなくご家族(血縁者)にも影響する大切な個人情報であるため、十分な説明を受け、患者さんが同意した上で検査を行います。