検査について 病状を確認するための主な検査

(1) 一般的な検査

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーでは、下痢や嘔吐、食欲低下などにより栄養状態が不良になり、体重が減少することがあります。また、心臓や腎臓などの臓器が障害されることもあります。これらの状態を把握して、異常が認められた場合にすぐに対応できるよう、身体測定や血液検査などを定期的に行います。

① 身体測定

体重や身長、BMIやmBMI(BMIとアルブミンの値から算出)を測って、栄養状態を調べます。

② 血液検査

心臓や腎臓などの機能や、栄養状態などを調べるために行われます。
主な検査項目:BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)/NT-pro BNP、心筋トロポニンT/I、クレアチニン、アルブミン、トランスサイレチン(プレアルブミン) など

③ 尿検査

腎臓の機能を調べるために行われます。
主な検査項目:尿蛋白 など

(2) 神経機能の検査

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーでは、感覚神経、運動神経、自律神経などにアミロイドが沈着して、様々な症状が現れます。病気の進行や治療の効果を評価するために、診断後も、診断前に行った神経機能の検査を定期的に行い、手足の触った感覚、痛み、冷たさが低下していないか詳細に検査します。

(3) 心臓の検査

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーでは、心臓にアミロイドが沈着することもあります。心臓にアミロイドが過剰に沈着すると、心不全などの重篤な病態へ進展して命を失う危険性もあるため、診断後も、診断前に行った心臓の検査を定期的に行います。

(4) 身体機能の検査

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーでは、運動神経が障害され、筋肉が痩せてしまったり(筋萎縮)、筋力が低下したり(筋力低下)、歩行障害がみられたりすることがあります。そのため、筋力や歩行能力を定期的に評価します。

① 徒手筋力検査

各筋肉ごとに筋力低下の有無や程度を調べるために行います。
筋力低下は神経障害によって低下することがあるため、筋力検査は、神経機能の検査の一部としても行われます。

② 握力検査

肩や腕、手といった上肢と呼ばれる部位の筋力低下の有無や程度を調べるために行います。

握力検査のイメージ

立った状態で握力計を持ち、腕を体幹に平行に保ったまま測定します。

③ 歩行試験(10メートル、6分間)

どれくらいまでの運動に耐えられるか(運動耐容能)を調べるために行います。

歩行試験のイメージ

10メートルの距離を歩行するのにかかる時間を測定する10メートル歩行試験や、6分間の歩行距離を測定する6分間歩行試験などの方法があります。

(5) QOLの検査

病気の進行度や健康状態が日常生活機能に与える影響を定量的に評価します。評価方法はいくつかありますが、質問票を用いて、当てはまるものを選択する形式です。回答に応じてスコアが算出されます。

(6) 眼の検査

眼球のイラスト画像

TTRが主に作られるのは肝臓ですが、眼の網膜でも作られることが知られています。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーでは、眼の中にアミロイドが沈着して、硝子体混※1や緑内※2などの症状が現れることがあります。そのまま放置しておくと、視力が低下して失明する可能性もあるため、視力検査や眼底検査(眼の奥にある眼底や硝子体の状態を調べる検査)、眼圧検査(目の中の圧力を調べる検査)、視野検査(見える範囲を調べる検査)などの検査を定期的に行います。

※1: 眼の中を満たす透明なゼリー状の物質(硝子体)が濁った状態です。硝子体が濁っていると、飛蚊症(視界にごみや虫のようなものが飛んでいるように見える症状)になったり、視力障害を起こしたりする場合があります。

※2: 視神経が障害されることにより、視野(見える範囲)が狭くなったり、部分的に見えなくなったりします。

(7) その他の検査

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーでは、手根管症候群や腰部脊柱管狭窄症などの症状がみられることがあります。これらの症状をみるために、X線検査、CT検査、MRI検査といった画像検査を補助的に行うことがあります。